「孫崎氏の講演不許可」

孫崎氏の講演不許可→開催場所変更

まず琉球新報の論壇に投稿した原稿を見て頂こう。

「災い転じて福となす」と講師の孫崎享氏は切り出した。県立博物館からは「政治的」だとして拒否された。講演の中身は「トランプ政権と東アジア」。沖縄の行方を占う大事なテーマだ。3月20日、場所をキリスト教学院大学内の教会に変えて実施した。言論の自由が博物館にはなく教会にあった?いやそういう話ではない。

そもそもの発端から語ろう。毎月行っている勉強会に孫崎氏を招くことにした。国際情勢に明るく、日米の現政権に対して鋭い批判を加えている論客だ。観客は150人以上集まるだろう。博物館のホールが最適だ。しかし会議室しか空いていない。とりあえず申請した。2月17日、担当者から断りの電話があった。「そぐわない」という理由だった。大あわてで他の場所を探した。その後、3月3日、館長あてに質問状を出した。危惧したのは、こうした「言論規制」が沖縄を代表する公共施設でまかりとおるのならば、県下の公民館や集会場の管理者が右へならえで、委縮してしまうのではないか。本土では「沖縄」や「憲法」というだけで「政治的」と見なされ、唇寒しの風潮と聞く。

この問題は、翌日の新聞に大きく報道された。「県博会場使用認めず」などの大見出しで、表現の自由に対する危機が感じられた。

指定管理者の美ら海財団からは謝罪に来られた。しかしこちらは謝罪を要求している訳ではなく、こうした誤りを二度と起こしてほしくない、という気持ちだった。聞けば、財団側は会議を開いて不許可を決めた訳ではなく、担当者が辺野古、高江、尖閣などの文字に過敏に反応したらしい。背景には、財団と県の文化・観光・スポーツ部との間で施設利用規定について協議中で、選挙運動や宗教活動、営利目的などは許可しない方向だった。さらに館長には諾否の権利はない、と聞いた。館長が指示も出来ず、報告も受けない。外部からはまことに分かりにくい話だ。

講演の中で孫崎氏は、「日本で一番民主主義が機能している沖縄」でこのような拒否に会ったことに驚いた、トランプ政権の下では軍備強化、一方で文化方面への予算配分削減が続いている、政治に影響されないものはない、と強調した。最後に講演参加者一同で「われわれ市民は目の前の小さな自由の制限を見過ごさないよう行動を起こしていきたい」と声明を出した。その後、県立博物館から「今後も幅広く県民に活用して頂けるよう運営」と、返答が来た。これを期に自由な言論が加速するよう望みたい。

結果としては県立博物館側のミスであることが判明し、指定管理者「美ら海財団」の部長、沖縄県の担当課長、博物館長、と三者から謝罪を受けた。以下、この「事件」の顛末を示すために琉球・沖縄センター発の文書などをご紹介する。重複するところは飛ばし読みして頂きたい。

講演の中身が「そぐわない」って何?

拝啓

貴館ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

さて貴館の会議室の使用許可方針について疑義がありますので文書でお問い合わせ致します。

3月20日、孫崎享氏を招き県立博物館会議室にて勉強会を

開催予定でした。しかし博物館側から、「中身がそぐわない」(ので貸せない)、との

ご返事が電話でありました。急遽、会場探しをした結果、キリスト教学院大学内の

教室で開催可能となり、事なきを得ました。

孫崎氏は元外務省イラン大使、国際問題に詳しい高名な評論家です。

勉強会のタイトルは、「沖縄とトランプ大統領」―今後の展開―。時局講演会として、恰好の演題と考えます。多くの県民が知りたいテーマです。

孫崎氏を招いた勉強会のどこが、そぐわないのか、そぐわなければ断っても良いのか、明らかにして頂きたいと思います。こうした不許可は沖縄では初めてのことではないかと推察しています。

東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センターでは過去2回博物館のホールと会議室を利用し、講演会・シンポジウムを開催しています。講師は茂木健一郎氏、平良朝敬氏・高野孟氏でした。その時は何の問題もなく、会場は満員の盛況でした。

今回の不許可は、孫崎氏の現政府批判の論調が理由なのでしょうか。

博物館は断ったが、ほかで出来るから良い、という問題ではありません。言論の自由に関わる問題です。今回のような対応が蔓延すれば、次第に公共的な施設では自由な言論は禁止、ということになりかねません。

小さな自由の制限に見えるかもしれませんが、大変大きな問題をはらんでいます。

文書によるご回答をお待ちしています。

                                                敬具

2017年3月吉日

東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター 

センター長  緒方 修

孫崎氏講演会で声明文発表

言論の自由を危惧する声明文

今回の講演会が沖縄県立博物館・美術館からいったん断られたことは、皆さまご承知のことと思います。申請書には、勉強会開催。タイトルは、「沖縄とトランプ大統領」―今後の展開―。

そして辺野古、高江、尖閣の問題について解説して頂く予定、と書きました。多くの県民が知りたいテーマです。ところが内容がそぐわない、として断られました。

辺野古、高江、尖閣という言葉だけで「政治的」と判断されたようです。

これらの地名がタブーとされれば、あとは沖縄という言葉まで制限されかねません。実際に本土では沖縄や憲法という言葉を使っただけで不許可になった例もあるようです。

考えてみてください。本土復帰運動が島中をおおっていた頃、日本という言葉を使った講演会や集会は至る所で開催されていました。当時のアメリカの高等弁務官でさえ、これらの声を妨げることはできませんでした。

不許可に対して琉球・沖縄センターから質問状を出しました。一部を読み上げます。

「孫崎氏を招いた勉強会のどこが、そぐわないのか、そぐわなければ断っても良いのか、明らかにして頂きたいと思います。こうした不許可は沖縄では初めてのことではないかと推察しています。(略)

今回の不許可は、孫崎氏の現政府批判の論調が理由なのでしょうか。(略)

言論の自由に関わる問題です。今回のような対応が蔓延すれば、次第に公共的な施設では自由な言論は禁止、ということになりかねません。小さな自由の制限に見えるかもしれませんが、大変大きな問題をはらんでいます。文書によるご回答をお待ちしています。」

これに対し、文書による回答はまだありません。一刻も早い回答をお待ちしております。

指定管理財団の方が謝罪に来られ、県の担当課長からも不手際だった、と電話がありました。我々は、謝罪を求めているのではありません。こうした言論の自由の制限が知らず知らずに広まることを懸念しています。

.このようなことが今後起らないよう、関係者の皆様には十分ご注意頂きたい、同時に、我々市民は目の前の小さな自由の制限を見過ごさないよう行動を起こしてゆきたい、と考えます。

平成29年3月20日

主催 東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター

共催 沖縄キリスト教平和研究所

『トランプ政権と東アジア』講演会参加者一同

県立博物館からの回答

3月28日に県立博物館・美術館の田名真之館長から回答が届いた。(文書は3月22日付)

沖縄県立博物館・美術館の使用許可について

文書にてお問い合わせがありました当館施設の利用許可について、ご回答いたします。

このたび貴センターからの利用申し込みにあたり、当館の指定管理者が誤って施設利用をお断りしましたことについて、多大なご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。

当館としましても、今後は指定管理者に対し、法令、規定等を遵守し、慎重で適切な職務の遂行について指導を徹底してまいります。

また施設の利用につきましては、今後も幅広く県民に活用していただけるよう運営してまいります。

今後とも当館へのご理解とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

声を上げよう

質問状を出した翌日には沖縄タイムスが一面トップに掲載。社会面2面を合わせて3面を使った大ニュースとなった。琉球新報も社会面で7段も報じた。元館長、憲法学者も一致して、おかしい、とコメントを出した。

指定管理者は国土交通省系の「美ら海財団」だ。安倍政権の意向を「忖度」して講演不許可にしたのではないか、という見方もあった。しかし実態は担当者のお粗末なミスだった。

これまでこのようなことは無かったのだろうか?

那覇市内のある公民館では憲法問題の講演会が断られた、とも聞いた。なぜその時、声を上げなかったのだろう。泣き寝入りしたら問題はなんら解決しない。さらに悪くなる。

沖縄は、米軍、日本政府の強力な弾圧にさらされ続けている。だから公民館の使用不許可くらいの「小さな自由の規制」は見過ごしたのかもしれない。

「権利のための闘争」(イェーリング・岩波文庫)という本を思い出した。自ら声を上げなければ、必ず権利は後退してしまう。特に今の政府は国民弾圧政権なのだから。


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Tel: 098‐963-8885

info-oki@eaci.or.jp

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